とことわ


 












                           

老愁



 

一片の雲もなく 

空はまったく 深くあおく高く澄みきり

遠くに累(かさな)る山々は ふさふさと秋色に染まっている

ケヤキ並木の橙色(だいだいいろ)の 紡錘形の樹影が 

生命あるかのように とても綺麗だ

 

こんな

のどかな陽光のなかに 音のない沈黙のときがとけてゆき

青い夢が さみしい老愁のなかに だんだんとしぼんでゆく

 

今では 

行きたいところなど どこにもありゃしない

それでも 

今日のように やさしくつつんでくれる

このあたたかい 日光がありさえすれば 

ひとりでも 生きてゆける

 

かたむく夕陽に 雲の底の影が黒くひかり

だんだんと さみしい静寂が 夕闇のなかに沈んでゆく

今日もまたこうして 

露に濡れた さむい夜気の匂いのなかに 

哀しい一日が 暮れてゆく

 

 

               奈津光平の詩「老愁」より







 

 

                          

光と影
















 

                        

春になれば