日向ぼっこ


 


ゆるやかな傾斜地の 山間に沿って 

狭い棚田が ひっそりと連なっている

 

その山裾の 萱葺き屋根の農家の

黒光りする縁側に さんさんと差し込む 冬の陽光 

 

白い障子の前に広がる 日溜りのなかの 日向ぼっこ

寒くてかじかんだ指先が ふっくりとふくれ

縮(ちぢ)こまった背中が ゆるゆると伸びてくる

 

ときおり 雲に太陽が隠れ 

あたりいちめん ひんやりとした冬にまいもどる  

 

しばらくすると ながれる雲の端が 太陽に炙(あぶ)られ 

きらきらと もう一度 やさしいぬくもりが縁側にひろがり 

うれしい丸坊主の影が 障子に膨らんでくる 

 

やがて 冬の短い山間の太陽は 

ほそい日光を落としながら 夕焼けに傾いてゆき

 

日向ぼっこの ぬくもりは さむい夕暮れの

かなしい懸巣(かけす)の鳴き声といっしょに 

山の彼方へ消えてしまった

 

 

          奈津光平の詩「日向ぼっこ」より





















                           

浮雲


 













                          

晩秋















                          

無音のこころ


 

すべてのときは死んでしまう

それなのに 

死んでしまったときの中の言葉は 

その命をながらえて 今でも人間を苦しめている

 

わたしは 

おぞましい人間の世界から逃げ出すため

人ごみを避けて 一人で汽車に乗った

そうして ときの旅人のように やさしい光を求めて

見知らぬ土地を彷徨(さまよ)った  

 

柿の葉に 秋の夕日が照りかえり

無言でただよう 淡いうす雲  

遠くの山々は 和毛(にこげ)のような薄茶色に染まり

椎の実が 枯れ草の斜面にころげ落ちる


ああ 月光のような言葉の人と話がしたい

そうして 自然のやさしさにつつまれて

無音のこころにひたりたい

 

          

        奈津光平の詩「無音のこころ」より