無言


 

ゆるやかな山肌に うす暗い雲の影が ゆっくりとながれ

その山の麓を 秋の陽光にきらきら輝く 銀色の列車が 

夢のように 走り過ぎてゆき 

線路の傍らの ススキの穂が 秋風に揺れている

 

秋の光は 透明に照り輝き とても綺麗だ

野原の日溜りに うす桃色のコスモスが咲き誇り

心が だんだんと可憐になってゆく

 

生まれてきた哀しみを 癒(いや)すかのように

短い秋の落陽に 天際の高積雲が 真っ赤に染まり

冷たい夜気を孕んだ夕闇のなかに 夕焼けがしだいに消えてゆく

 

今に続いているはずの過去は どこにも見当たらないけれども

空虚な風の吹く 狭い路地裏の さみしい築地塀の影に

寄る辺のない 無言の一日が終わってゆく

 

 

奈津光平の詩「無言」より