太陽の光や豊かなみどりや爽やかな風など魂を揺さぶる風景は、こころの奥底に沁みわたり、それが言葉になって詩が生まれます。詩はこころの風景です。言葉で紡がれたこころの風景を画像と一緒に楽しんでいただけたなら幸甚に存じます。
蝉のころ
灼熱の陽光が降りそそぐ炎天下に
赤い松の樹皮にしがみついて かしましく蝉が啼いている
今年も いつのまにか 蝉のころとなってしまった
ああ 赤く命を震わせて啼く蝉の声が わたしを遠い夏の日に連れ戻す
息が詰まるほど懐かしい あの青い砂浜の民宿
子供たちは波打ち際で 砂のお城を作り 潮の香りの松風が海辺を吹き渡る
紫紺の水平線に 夕陽が茜色に沈み 食卓には溢れるほどの海の幸
入道雲が幾重にも聳(そび)えたつ公園で 転がるように滑った急傾斜のすべり台
早瀬の流れが小さな滝つぼに落下し 白く立ちのぼる冷気
パンツまで濡れて 水遊びをしている子供たち
空と屋根の遠くより しいと啼く蝉の声が 遠い昔に駈け巡る
蝉の子を捕らえようとして 熱い砂地を踏んでいった子供たちよ
今は何処にいるのだろうか
奈津光平の詩「蝉のころ」より
登録:
投稿 (Atom)


