化身


 

なだらかな山稜へ落ちてゆく 音のない孤独の夕陽に

和毛(にこげ)色の山肌が 淡雪のようにひかり

谷底の渓流に 冷たい北風が 吹きわたる

 

黄色い夕陽は だんだんと 暗闇に呑み込まれ 

残光をまき散らしながら ゆらゆらと 古いときのなかに消えてゆき

白い夜が 鬼夜叉のように 漂泊の旅人の生命を 削り取ってゆく

 

こんな 虚ろなときのなかで さみしい老化の道を 彷徨っていても

生きている限りは かならず 夜明けとともに 目眩く太陽に邂逅することができる

 

だから 夢の寝床に横たわる そのときまで 嗄れた咽喉を 

ひりひりさせながら 鋭角に研ぎ澄まされた 生きる意志をぎらぎらと輝かせ

そうして 

最期の空蝉のときを迎えたなら その末期の瞬間に

強靭な生命の光彩を じんじんと放射する 太陽の光に化身したい

 

 

     奈津光平の詩「化身」より