虎落笛


 


暗い参道(さんどう)に 

冷たい木枯らしが 死人の呻き声のように 

虎落笛(もがりぶえ)を吹き鳴らし 竹藪がさわさわと揺れている

 

淋しい旅人は うら哀しい お札を納めに 

虚無の人形のように 参道をとぼとぼと登ってゆく

還りは怖くても 七つのお祝に惹かれて歩いてゆく

 

お寺の黒い屋根に 寂寥のときが 流れ過ぎ

寒い墓石の上の 真っ白な小鷺が 無常の真理をつかんだかのように 

白い羽根を翻(ひるがえ)して 遠いときのなかに飛んで行った 

 

凍える寒さの冬に だんだんと 襤褸のように 赤い生命は縮(ちぢ)んでゆき 

遠い昔に 風車を回して遊んだ 幼いときが 夢か現(うつつ)に入り乱れ 

鬼灯(ほおずき)のように まぼろしの彼方へ消えてゆく 

 

 

        奈津光平の詩「虎落笛」より