寂光



 

凍空(いてぞら)に しんかんと 寒い太陽がかがやき 

澄みきった静寂のなかに 凛然(りんぜん)とした寒気が漂う

 

楢(なら)の木の うす茶色の枯葉が 風に揺られて 

カサカサと 遠い昔のような 淋しい葉音をたて

 

真っ赤に完熟した木守柿が 網脈のように入り組んだ裸の枝に

寂しくひとつ ぶら下がっている

 

冷たく冴えわたる 大気の中に 冬木の桜並木が どこまでもつづき

その傍の 冬枯れの白い川に 細い水が 音もなく流れゆき 

 

川堤の石垣に 電飾の豆球のような果実をつけて 

枯蔦(かれつた)が 抱きついている

 

縹渺(ひょうびょう)たる 灰色の雲間から 冬の陽光が差しこみ

 

遠くに連なる 山並みの頂は 太陽に明るく 照り映え 

 

雲の影が落ちこむ山裾は うす暗く静かに 冬を耐えている

 

 

                   奈津光平の詩「寂光」より

 

 





 

 

 

                          



赤い町


 








































                           

駅舎の電燈


 













                          

やわらかいとき



 

名も知らない うすむらさきの花が

路端にひっそりと咲いている

しらじらと 青竹を割ったような 

静寂があたりをおおっている

 

何処からともなく 

やわらかいときが ゆっくりと静かに

からまりながら ほぐれながら 

こころにすべりおりてくる 

 

からころ からころ 

だれかがこころを叩いている 

森のなかの 木霊(こだま)の妖精かもしれない 

若い木々の香りを 思い切り吸い込むと 

生命の結晶が こころのすみずみに 

沁みわたった

 

蝶々でも蜻蛉でも蛙でも

蛇でも鴉でも鼠でも泥鰌でも

みんなみんな きらきらひかって

生きている

 

 

 

奈津光平の詩「やわらかいとき」より















                          

雪吠え