至宝


 

さわやかな碧天から 透きとおる青い風がおりてきて

クスノキのみどりの葉裏に 光と影がちらちらとゆれまどい

つややかにきらめく春陽に 小川のせせらぎがピカピカ光っている

 

こんな光の中にただひとり のんびりたたずんでいると

厳しい寒風にふるえていた 青白い魂魄が 遠い昔のように

じんわりと解凍されてゆき だんだんとこころが透きとおってゆく

 

もう 山の彼方の空の遠くに住む幸いなんて まったくいらない

今こうして ゆったりと 至宝の陽光につつまれて

いっさいの 醜悪な世俗の塵芥に 煩わされず 

呆けたように ただぼんやりとしていることが わたしの最大の幸福なのだから

 

 

        奈津光平の詩「至宝」より