脆弱



紺碧の空に のんびりかがやく春の陽光 

雪洞(ぼんぼり)のようにゆれる 枝垂れ梅の紅い花房

黄色い花粉にまみれて 椿の蜜を吸っている ヒヨドリ

 

暖かい春風に 幼い日々の囁き声が谺(こだま)し 

高い煙突から 昔の夢が立ち昇る

春の香りのなかに だんだんと魂がとけてゆく

 

欠伸がでそうな 気持ちのよい春日に

なぜかしら ふとよぎる 生命の脆弱な不安

こころに疼(うず)く 戻らない日々

 

孤独の影にも 春はめぐりきて

わたしの有限は いつかは無限に還る

そのあとには 何もない

 

 

奈津光平の詩「脆弱」より