少年


 


ほこりっぽい砂利道を 麦藁帽子の少年が歩いている

まわりの田圃から 蛙の鳴き声がする

川では 白い蛇が鎌首をあげて泳いでいる

ときおり生暖かい風が吹いてくる

 

少年は 夏休みの小学校にたどり着いた 

夏休みの校庭は 死人のように静かだ

腐りかけた廊下も 静謐の中で眠っている 

教室の窓硝子を覗くと 

傷ついた机と椅子が さびしそうに夏休みを過ごしていた

 

夜になると 校庭の片隅の露草に  

蛍の淡くかなしい光が ほのかに明滅する

そうして 夜はしんしんと深まり

あやしげな夜気が しくしくと肌にながれてゆく

 

ああ 

こころに残る面影は 少年のときに刻まれて 

わたしの目の前を ゆっくりと通り過ぎてゆく

わたしは うつろな眸(ひとみ)をして

もはや とりもどすことはできない そのときの流れを 

呆けたようにじっと 見つめ続けていた

 

 

   奈津光平の詩「少年」より










 

                         

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