赤い欄干


 

俯(うつむ)きながら さむい日陰のなかを歩んでいく

こころのざわめきは 繊毛のようにふるえ

うつろな独り言をたれながす


今こうして歩いているわたしが 

明日もこうして歩いていると 

もう信じることはできない


胸が息苦しい

空気に色彩がない

昔なんて何処にも残っていない        

 

痩せた犬が 赤い欄干を齧(かじ)っている

かなしい眸には 青白い涙がにじんでいる 

さびいし遠吠えを残して 

病んだ野良犬は 川のなかに身を沈めた

 

生まれてきたことは 夢の中の幻なのだろうか

そのおぼろげな思念の刹那   

凍てついたこころに 何かが弾け散った

まるで 抒情の結晶をまるかじりしたように

やわらかい光が 悲しい魂のなかに

ゆっくりとゆっくりと しみこんでいった

 

 

   奈津光平の詩「赤い欄干」より


 

 

 




 

                         

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