春風に吹かれて


 


空はまったく 無駄のない真っ青に染まり

凍空(いてぞら)も すっかりゆるんで 

きらきらと 春の光が おちてくる

 

その光のなかに 爽やかな春風が 玲瓏と吹きわたり

白光りのする 梅の花びらの 光と影が 夢のように揺れている 

 

そんな ぽかぽか陽気の春風に やさしく頬を撫でられていると 

遠い昔に凍りついた 憎悪と怨念は だんだんと 

古いかりそめのときのなかに 淡雪のように 消えてゆく 

 

そうして さむい旅人は 

花海棠(はなかいどう)の 清楚な匂いに 噎(む)せながら 

やさしい光につつまれて 生まれてきたままの 本当のときを歩み始める

 

 

                 奈津光平の詩「春風に吹かれて」より














                          

 

 

 

 

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