予感


 

碧天の大空に 太陽がまぶしく輝き          

さんさんと陽光の降り落ちる 白い野道を  

青い帽子のさみしい老人が 黙々と歩いている

 

小川の清流に吹きわたる 涼しい風音にまぎれて 

誰かの呼びかける気配に おもわず 老人は振り返ると

玉蜀黍のかすかに焼ける ふるさとの匂いが漂ってきた

 

老人は 刮目(かつもく)して 遠くをじっと見つめると

うす茶色の山並みは 眼にもいたい新緑に 生まれ変わり

あの妖艶な桜に うすみどりの若葉が ぎっしりと繁っている

 

老人は 蜩の鳴き声のように うすうす予感していた  

ときのながれに翻弄され 魂魄の火焔が 消えかかっていることを

 

皺のふえた拳を握りしめ とぼとぼと 

若草の小道を 遠ざかってゆく 老人の孤影は 

蜘蛛の巣にからまる羽虫のように 無言の涙にぬれていた

 

 

奈津光平の詩「予感」より

 

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