無音のこころ


 

すべてのときは死んでしまう

それなのに 

死んでしまったときの中の言葉は 

その命をながらえて 今でも人間を苦しめている

 

わたしは 

おぞましい人間の世界から逃げ出すため

人ごみを避けて 一人で汽車に乗った

そうして ときの旅人のように やさしい光を求めて

見知らぬ土地を彷徨(さまよ)った  

 

柿の葉に 秋の夕日が照りかえり

無言でただよう 淡いうす雲  

遠くの山々は 和毛(にこげ)のような薄茶色に染まり

椎の実が 枯れ草の斜面にころげ落ちる


ああ 月光のような言葉の人と話がしたい

そうして 自然のやさしさにつつまれて

無音のこころにひたりたい

 

          

        奈津光平の詩「無音のこころ」より








 

 

                         

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