路地裏


 


昔のときの呼吸する 

ひっそりとした 白い路地裏  

 

ところどころに 

荒壁の剥げ落ちた廃屋が 淋しそうにたたずみ 

苔むした溝に 痩せた水が 流れている

 

狭いでこぼこの 曲がりくねった裏道に 

かしましい蝉の鳴き声が 赤い空気を震わせ

 

ときおり 潮の香りに交じって 

幽(かす)かに 魚の生臭い匂いが漂ってくる

 

遠く澄みわたった青空に 

ゆったりと 雲影がながれてゆき

 

人影が全く途絶えた 路地裏に 

静かに夕暮れが 忍び寄る

 

やがて しんしんと 夜気の漂う草むらの影に 

蛍の光が うす淡く明滅し 

 

幼いときが 夢のなかに 消えてゆく 

 

 

 

奈津光平の詩「路地裏」より

 







 

 

                            

0 件のコメント:

コメントを投稿