青いインクと白い紙



     真っ白な紙と青いインクが好きだった

     黒御影色に輝くペンが好きだった

 

     文房具店のウインドウに飾ってある

     黒いペンと青いインクと白い紙に

     小さな胸をときめかせた

 

     勉強机にそれを置いてみたかった

     そのペンに青いインクを濡らし

     真っ白な紙に文字を書いてみたかった

     そうすると 遠い憧れに

     近づけるような気がした

 

     寒い冬の夜も ウインドウの灯りが

     消えるまで ずうっと 眺めつづけていた

     胸をときめかせ

     白い紙に青いインクの文字が素敵な物語を

     紡ぎだすのを夢みていた

     語られたお話に お母さんが優しく

     微笑んでくれるような気がした

 

     遠い記憶のそのなかで (おぼろ)げに霞む

     お母さんの微笑みは

     青いインクと白い紙に滲みでて

     言葉にならない 白百合のようだった

 

                    

               奈津光平の詩「青いインクと白い紙」より







 

                          

0 件のコメント:

コメントを投稿